傳田流成功法
第11回 大規模サーバでもIntelが台頭へ (2) / NEC Express 5800での経験
前回は,私が大規模サーバ市場において,SolarisマシンからIA-64ベース・システムへの移行ビジネスに注目していることを紹介しました。その根拠は,今後SPARCプロセサよりもIA-64プロセサの方が,確実に性能向上していくと感じているからです。実際,私がIntelに在籍していたときにも,ワークステーションから発展したRISC(reduced instruction set computer)系プロセサよりもIntelプロセサに移行していくさまを目のあたりにし,Intel側として全力で対応した経験があります。
それは,1995年に登場した32ビットの小規模サーバ,いわゆるPCサーバ向けプロセサのPentium Proとそれを搭載したNECのサーバExpress 5800です。当時NECは,オフコン,Windowsサーバのプラットフォーム(ハードウエア)をPCサーバとして世界共通にする戦略を立て,Express 5800というブランドを立ち上げていました。
Express 5800には,当初Pentium(100MHz)搭載の100シリーズとRISC系のR4400(150M/200MHz)搭載の上位機種200シリーズがありましたが,NECはPCサーバでのトップシェアを獲得するためにIntelと技術協力関係を結びました。この協力関係では,NECが持っているメインフレームやオフコンのノウハウをIntelが提供するプロセサやチップセットなどに反映させるために,IntelはNECに対してサーバ用次世代プロセサ(Pentium Pro)やチップセットの情報,開発サンプル品を提供しました。NECからはサンプル品の評価やニーズ情報をフィードバックしていただくというように,両社は密接な関係になりました。
IntelとNECの協力関係は,Pentium Pro搭載サーバの開発で生かすことができました。まず,1995年11月にIntelがR4400と同じ動作周波数200MHzのPentium Proを発表すると,NECはExpress 5800の上位機種に採用していたプロセサをR4400からPentium Proに切り替えることを決めました。RISC系プロセサが高性能であるという優位性が薄れ,豊富なWindowsアプリケーションを高速に動作させる,という魅力が増したのです。
さらに,NECは8プロセサ構成対応のチップセット「Aqua」を独自開発し,Windowsサーバとしては,(1)初の8ウエイ・プロセサ・システムを構築し,(2)当時(1997年12月)としては最速(TPC-Cベンチマーク結果が1万4900tpmC)のシステムを実現しました。これは,IntelとNECの協力の下,Intelから提供したPentium Proのプロセサ外部バスに関する技術情報が役に立っています。
実は,Pentium Pro登場当初,NECはPentium Pro搭載のPCサーバを,競合他社と比べて約6カ月先行して出荷を始めました。これは,当初NECなどサーバ・メーカはPentium Pro搭載サーバをIntelからOEM調達していたことに起因しています。NECは1996年3月末までにPentium Pro搭載サーバを数百台納入しなければならない大口ユーザを抱えていましたが,IntelはまだOEM供給機の試作段階で,限られた数量しか提供できない状況でした。
この件に関して私は,Intel本社と連日のように打ち合わせをして「Intelのサーバ・ビジネスを立ち上げるために,OEM試作機を複数のメーカに分散提供するよりもNECに集中供給したほうがよい」と本社側を説得しました。
Intelは,NEC以外のサーバ・メーカにはOEM試作機を評価用として提供する予定でしたが,実際に数十億円レベルのビジネスを抱えていたNECを優先し,NECに向けて優先出荷することを決断しました。その後,IntelがOEM供給機の量産を始めるまでに約6カ月を要したため,結果的にNECが先行してPentium Pro搭載サーバを出荷することになったのです。
Express 5800開発側の責任者である小林 一彦氏(現在,NEC執行役員常務)は「Express 5800の事業を軌道に乗せるため,そしてPCサーバで先行するCompaq Computer社(当時)を追い上げるため,Intelとの密接な関係が重要であった」と回顧しています。また,小林氏からは「傳田氏が指摘したように,PCサーバの市場はIntelプロセサによって急拡大した」と感謝されています。
このような経験から,64ビット大規模サーバに関しても今後IA-64プロセサが優位になっていくと思っています。










